【楽曲紹介】交響詩<禿山の一夜>/ムソルグスキー
「聖ヨハネ祭の前夜、禿山に黒い神ことチェルノボーグが現れる。手下の魔物、幽霊、精霊たちと大騒ぎをするが、夜明けとともに消え去る」
交響詩<禿山の一夜>の魅力
力強い響きのロシア音楽、物語性のある交響詩の魅力に迫りましょう。
曲の基本情報
- 曲名:交響詩<禿山の一夜>
- 英名:Night on Bald Mountain
- 作曲者:モデスト・ムソルグスキー(Modest Petrovich Mussorgsky)(1839年-1881年)
- 出身国:ロシア
ロシアの民話をテーマに作られた音楽<禿山の一夜>
ロシアの民話に「聖ヨハネ祭の前夜に不思議な出来事が起こる」という言い伝えがあります。聖ヨハネの前夜祭とは夏至にあたる日とのこと。
夏至というとシェイクスピアの「真夏の夜の夢」と同じテーマです。
禿山に地霊チェルノボーグが現れ、手下として従える無数の魔物・幽霊・精霊と大騒ぎをします。そして夜明けとともに静かに消え去り、何事もなく朝を迎えます。
演奏では低音楽器による重厚なテーマによってチェルノボーグを表しているのでしょう。
ロシア五人組の一人ムソルグスキーによる意欲作
19世紀のロシアにおいて演奏される曲はイタリア・ドイツ・フランスものばかり。たまに演奏されるロシアの音楽ほとんどが西洋音楽の流れを汲んでいる(チャイコフスキー等でしょうか)ことを残念に思っていたようです。
ムソルグスキーはロシア人ならではの音楽を作りたいと考え、その為に民間伝承の再現や、農民をはじめとした民衆の生活の姿を描くのを目指しました。
ロシアの民話をもとに書かれた「禿山の一夜」、1867年に発表されましたが、当時は意欲的すぎたオーケストレーションが受け入れられず演奏には至らなかったようです。(後述の原典版になります)
その後、オペラを書く際にその中の一節として入れようと模索していましたが、自身の死によって叶いませんでした。
ムソルグスキーの無念を友人が発掘・発信
ムソルグスキーの没後1881年、五人組の一人であり、友人でもあったリムスキー=コルサコフは彼の才能をなんとか世に伝えたいと思い、この作品を採りあげました。
ムソルグスキーの描いた荒々しさ、おどろおどろしさを生かしつつ、全体的にきれいにまとめてあります。特に終盤の朝の鐘で魔物たちが去っていくシーンがコルサコフによって書き足されたことによって、音楽的に救いのようなものも生まれました。(原典版は魔物たちが盛り上がったまま曲が終わってしまいます)
コルサコフの華麗な技法によって出来上がった編曲版は1886年に発表され、現在では広く親しまれています。ロシアの作曲家二人による意思が感じられる名曲に仕上がっています。
<禿山の一夜>の"原典版"も聞き比べてみましょう
楽譜が残っていれば演奏をして録音をするオーケストラ団体はあるものです。YouTubeでも「禿山の一夜 原典版」などと検索すれば聴くことができます。コルサコフ版と聞き比べると違いがよくわかります。
原典版のほうが全体的に激しさがあり、特にティンパニによる連打が多用されて荒々しく聴きごたえがあります。
映像との融合!ディズニーのファンタジアについて
ディズニーによって作られた、クラシック音楽と映像を融合させた有名な作品として「ファンタジア」「ファンタジア2000」があります。
1940年に作られた「ファンタジア」に<禿山の一夜>が収録されており、まさに曲のイメージ通りといった作品です。まだ見たことのない方は一度見てみてください。