タロットカード20番「審判」に関わるクラシック音楽
タロットカードの絵柄は神秘的な寓話や、宗教的な意味合いとリンクしているので絵画などで同じ構図がみられますよね。
今回は絵画とは別で、同じ物語をもとにした音楽をまとめていこうとおもっています。
タロットカード20番「審判」は聖書に出てくる終末思想
というわけで、タロットの「審判」ですね。ご存じの通り、聖書に書かれた世界の終わりの日ですね。
キリスト教では、世界の終末にキリストが過去を含めすべての人間を地上に復活させ善悪の審判をし、天国と地獄のどちらの住人にするかを選別するという教えです。
新約聖書だけでなく、旧約聖書にも記載がありますので、聖書の影響を受けた多くの宗教に同じような思想がみられるわけですね。
「怒りの日(ディエス・イレ)」「最後の審判」といった表現もよく見られますね。
怒りの日(ディエス・イレ)を表す旋律
さて、この怒りの日を含め、キリスト教に関する音楽は多く作られています。作曲者ごとに有名なものはありますが、後世の音楽に引用されることの多いグレゴリオ聖歌の旋律を紹介します。
基本的に繰り返しなので、最初の一分くら聴いてもらえばいいかなと思います。
歌詞も載せておきます。
Dies iræ, dies illa
solvet sæclum in favilla:
teste David cum SibyllaQuantus tremor est futurus,
quando judex est venturus,
cuncta stricte discussurus怒りの日、その日は
ダビデとシビラの預言のとおり
世界が灰燼に帰す日です。審判者があらわれて
ウィキペディア(Wikipedia)より引用
すべてが厳しく裁かれるとき
その恐ろしさはどれほどでしょうか。
グレゴリオ聖歌という、伴奏のない宗教音楽ということもあり厳かな雰囲気の曲です。
ベルリオーズ「幻想交響曲」で引用され、死を表す旋律として広まる
音楽では昔からある、ほかの曲のテーマを拝借して、引用元の音楽の世界観も取り入れる方法。俳句とかでいえば枕詞みたいな、大体そんな感じですね。
「怒りの日」のテーマはベルリオーズ「幻想交響曲(1830年)」で引用され、死を連想する旋律として広まっていきました。
この音源でいうと、45:35くらいに「怒りの日」の旋律が登場します。
「幻想交響曲」とはなんぞやという話は長くなるので、とりあえず次のポイントを押さえておいてください。
- 第1楽章「夢、情熱」
- 第2楽章「舞踏会」
- 第3楽章「野の風景」
- 第4楽章「断頭台への行進」
- 第5楽章「魔女の夜宴の夢」
上の五つの楽章からなる音楽ですね。めちゃざっくりいうと1~3楽章が愛する人との記憶、第4楽章でその彼女を殺してしまい死刑を宣告・執行されます。
第5楽章は死後の世界、魔女や魑魅魍魎が彼の葬儀のために集まってきて、怒りの日のパロディ・サバト(魔女)のロンド・弔鐘など死にまつわるテーマがごちゃ混ぜに奏でられる・・・。
全ては薬物による幻想からなるビジョンと説明されていますが、作曲者ベルリオーズ自身の見た夢と言われることもあります。それはさておき、この曲に用いられたことから、終末思想としてよりも「死」のテーマとして広がっていくこととなります。
その後の引用された曲
ベルリオーズ以降、様々な死にまつわる曲に引用されていますが、その中から一つ紹介します。
フランスの作曲家サン=サーンスの1872年ごろに作曲した「交響詩<死の舞踏>」です。
ソロヴァイオリンが死神です。シロフォン(木琴)はカチャカチャと踊るガイコツですね。
夜中の12時に死神が現れ、ガイコツたちを蘇らせてダンスしたり大騒ぎ、朝にニワトリが鳴くとザッと隠れて静かな日々に戻る・・・。というテーマです。
「怒りの日」のテーマはこの音源では3:14ごろ、フルートによって演奏されます。少し変形しているので印象も違いますね。パロディ的に使われています。
「死の舞踏」は死の恐怖を前に人々が半狂乱になって踊り続けるという14世紀のフランス詩が起源と言われており、「怒りの日」とは関係性はありません。ある日突然訪れる死は、身分や貧富の差は関係なく、常に身近にあるもの。「メメント・モリ」という思想ですね。
このようなテーマだとタロットの13番「死神」が近くなってきますね。死は誰にでも訪れるもの、受け入れるしかない。
占いと絵画と音楽と
「審判」から「死神」のカードにつながってしまいましたが、もともと様々な思想を取り入れたタロット。関連する神秘的な要素を次々とみていくと新しい知識にどんどんつながっていきますね。
クラシック音楽はキリスト教以外にもさまざまなテーマで作られた音楽がありますので、ほかのカードも探してみたいですね。
そんなこんなで終わりです。